脳梗塞の症状を確認した私は救急車をお願い
して激しいバウンドに耐えながら、ようやく
受け入れを要請した地域の基幹病院の救命
救急センターへ到着しました。
午前7時少し前だったように
記憶しています。
意識もはっきりとしておりましたし、救急
隊員の方との会話も支障がなかったせいで
しょうか、到着と同時に看護師や医師に
囲まれるということもなく、隊員の方に
ストレッチャーを押されて処置室へと
入って行きました。
中へ入るとすぐさま着ていた衣服を脱がされて一式が黒いビニール袋に
しまわれるのを見て、まるでゴミだなと横たわりながら考えていました。
当直の医師にも救命救急士の方に説明したように、これまでの経過を話し
ますと、すぐにCTスキャンやMRI、MRAなどの検査をしますが、おそらく
脳梗塞を発症していると思う、あの長嶋さんが罹った病気です、と告げられ
ました。
ドラマでは救急病院などのシーンでストレッチャーからベッドへの移し替えを、
4~5人の人間が気合いもろとも「イチッ!ニッ!」と素早く行うのを見て
いましたが、私の場合は「じゃあ、病院のベッドに移しますね、はい~っ。」
とけっこう緩やかな感じで、あまり緊迫感はなかったような雰囲気だった
ように思います。
俄然緊迫感が増してきたのは、処置室から
映像診断機器のある部屋への移動からで、
再びストレッチャーへと移されるやいなや、
もの凄いスピードで走り出しました。
何しろ寝たままですので天上の蛍光灯と周り
の医師や看護婦の顔しか見えない状況で、
スリリングなコーナリングのたびにスト
レッチャーから飛び出すのではないか、と
けっこうドキドキしたものです。
今思えば脳梗塞の処置は時間との戦いで
あることはよく分かりますので、その時には
移動にも一秒を争っていて下さったのでしょう。
しかしその時は寝転んだままでも目は回りそうになるものだということが分かって、
まだまだ脳梗塞の重大さには気付いていませんでした。